Home導入事例株式会社1&D

Case Study

導入事例

外国籍スタッフ教育を効率化。株式会社1&Dが接客マニュアルの翻訳内製化で実現した「教育の均質化」と「更新スピードの向上」

「ワンカルビ」や「あぶりや」など焼肉食べ放題業態を中心に多店舗展開を進める株式会社1&D(以下1&D)。外国籍スタッフの採用を積極的に進め、現在(2025年10月)では21カ国・約900人が働いています。多様な人材が最前線で活躍する一方、店舗運営における重要課題となっていたのが、統一されていなければならないサービス品質が店舗やスタッフごとにばらつきが生じていたことです。

その原因の一つが、調理や接客などの各種マニュアルの多言語化が追いついていなかったこと。日本語マニュアルは最新になっていても外国籍スタッフの母国語版は古いまま。現場の隅々にまでマニュアルの情報が行き届いていない状況でした。

そのために取ったのが、外部委託していたマニュアル翻訳を内製化することーー。

内製化する狙いは
1)日本語マニュアルの更新と多言語化のタイムラグをできるだけなくす
2)翻訳にかかるコストの削減
で、その条件に合致したのが翻訳支援ツール「ヤラク翻訳」でした。

この記事では、導入したことが1&Dのマニュアル更新と翻訳がどう変わったのか、さらにはスタッフ教育にどう影響したのかを紹介します。

株式会社1&D

大阪市に本社を置き、焼肉食べ放題業態を中心に複数の飲食ブランドを全国で展開する飲食業。
焼肉業態を主力とし、ファミリー層から若年層まで幅広い客層を取り込み、立地特性に応じた店舗を運営。
従業員数は約9,000名(アルバイト含む)規模にのぼり、全国各地の店舗ネットワークを支えています。

ウェブサイト:https://1andd.co.jp/

お話しを伺った方

株式会社1&D
営業本部
人財育成部教育担当責任者
西上輝氏

株式会社1&D
営業本部
人財育成部教育担当責任者代理
燃脇誠氏

課題・懸念
・部門ごとにバラバラなツール利用
・明確な利用ルールの欠如
・アカウント管理への不安

期待
・社内システムと連携した安全な翻訳基盤の構築
・社内ポリシーに合わせた柔軟なカスタマイズ対応
・用語統一による翻訳品質の向上

課題:多国籍化が進む現場|スタッフ教育の属人化とマニュアル多言語化の遅れ

「ワンカルビ」や「あぶりや」などの店舗では、ネパールやベトナム、ミャンマー、バングラデシュといった国のスタッフが活躍しています。母国語ではない日本語を使い、日本式のサービスを可能にしているのが、細かい部分まで定めたマニュアルがあるから。

調理・衛生・接客・レジ操作などマニュアルは十数種類に及び、それぞれの現場でマニュアルに基づいた接客が行われていますが、外国籍スタッフの接客品質にばらつきが生じてしまった時期がありました。
本来、マニュアルに従って行われるべきものが、マニュアルの多言語化が追いついていないがために、現場では「日本語がわかる一部の外国籍スタッフ」への丸投げに近い状態になってしまいました。

結果として、

  • 新しいスタッフの教育を担当できる人がごく一部に偏る
  • 内容やレベル感が教える人次第になってしまう

という“属人化”が進行していたのです。

人材育成を担当する西上氏は当時をこう振り返ります。

「3年前まではベトナム人が中心でしたが、本当に多国籍になって。言語も文化も異なるスタッフがいる中で、日本語マニュアルだけでは教育が追いつかず、理解の深さに大きな差が生まれていました。店舗によっては、たまたま日本語ができるスタッフ一人に教育を任せるしかなく、その人の経験や感覚にかなり依存してしまっていたと思います」——西上氏

背景:頻繁に更新されるマニュアルと外部翻訳の限界

その背景には、1&Dではマニュアルが多岐に渡り、さらに更新頻度も高いという特有の事情があり、日本語のマニュアルは更新できても翻訳が追いつかず、外国語版は古いバージョンのままといった事態が起きていました。

教育の属人化を解消し、どの言語を話すスタッフでも同じ接客水準に引き上げることが急務に。そのためには、日本語と外国語とのタイムラグをできるだけ無くさなければなりません。

外部企業に依頼していた翻訳を内製化することに切り替えることを決断します。外国語版が“古いまま”放置されてしまう一因に、翻訳の外部委託が高コストだったこともあります。

さらに、ベトナム語だけでなく、ネパール語やミャンマー語への対応も迫られ、これらの言語の翻訳も外部に依頼することは現実的ではありませんでした。

「当時は全てのマニュアルを外部委託しており、一回の翻訳費が100万円規模になったことも。更新のたびにかかるコストとリードタイムの長さがネックで、結果として現場は古いマニュアルを使わざるを得ない状況でした。店舗には教育面で迷惑をかけて申し訳なかったです」——西上氏

1&Dが国内で展開する店舗

スピード・コスト・使いやすさが備わった「ヤラク翻訳」

外部の翻訳会社は品質こそ安定しているものの「コスト」「納期」「後編集(ポストエディット)のしにくさ」が残り、スピード感が求められる現場の多言語化に対応するのは難しくなっていました。

内製化を検討するに当たり、複数の機械翻訳ツールを比較検討します。

– PDFやWordなど多様な形式に対応できること
– 操作がシンプルで、専門知識が不要なこと
– 既存マニュアルのレイアウトを極力崩さずに翻訳できること
– コストを抑えつつ、更新頻度に耐えられること

などを基準に選んだ結果、もっとも適していると判断したのが「ヤラク翻訳」でした。

研修とマニュアル作成を担当する燃脇氏は、導入前後の変化をこう説明します。

「PDFをそのままアップロードして翻訳できるので作業時間が大幅に短縮されました。外部委託で1カ月かかっていた翻訳が、ヤラク翻訳なら1日程度で完了します」——燃脇氏

特に“作業時間の大幅な短縮”は1&Dにとって重要でした。
日本語版マニュアルの更新から間を置かずして、それぞれの言語版を揃えられるようになったことで、本部と現場の情報ギャップを最小限に抑えられるようになったのです。

「文字数制限がなく、追加費用が発生しないというコスト面もクリアしました。直感的に操作できて、現場で無理なく使えるのもいいところです」——燃脇氏

活用方法:機械翻訳 × 人のチェックで“現場で使える”マニュアルに

ヤラク翻訳の導入後、1&Dでは本社育成部門が日本語マニュアルを翻訳し、各言語に堪能な社員が内容をチェックする二段構えの運用体制を整えました。

まずヤラク翻訳でベースとなる文章を一気に作成し、その後、人が文化や文脈に合わせてポストエディットをすることで“現場で本当に使える”多言語マニュアルに仕上げていきます。

25年8月にベトナム・ホーチミン市にオープンした「あぶりや」のケースでは、特に重要な役割を担っているのが、ベトナム人のダット氏です。

ベトナム人一期生として長く1&Dで勤務し、ベトナムにオープンした店舗での現地スタッフの教育に携わっています。
ダット氏は日本とベトナム両方の文化に精通。翻訳されたマニュアルが、ベトナムの店舗での実際の業務フローや現地の接客スタイルと照らし合わせて違和感がないかを判断する“品質監修者”のような役割も果たしています。

「日本語の『お客様』を直訳すると、ベトナム語では距離がありすぎる表現になってしまいます。ベトナムではフレンドリーな接客が自然なので、文化に合わせて親しみやすい言い方に調整しています」——ダット氏

ベトナム・ホーチミンの店舗でスタッフ教育にあたるダット氏

日本語のマニュアルで頻出する

「恐れ入ります」
「少々お待ちください」
「なるべく」「しっかり」などの曖昧表現

についても、直訳すると意味が弱くなり、むしろ意図が伝わらなくなることもあると指摘します。

※ホーチミン市に新規オープンした店舗

「日本語の曖昧な表現は、ベトナム人にとって“どう行動すべきか”の判断が難しいことがあります。機械翻訳で土台が作れるので、私たちはその“行動の意図”を丁寧に伝える表現に調整することに時間を使えるようになりました」——ダット氏

このように、
“スピードは機械翻訳、現場の適応は人の知見”
という役割分担が確立したことで、マニュアルの完成度が飛躍的に向上。
マニュアルを読めば一定水準以上の接客ができる環境が整い、これまでの課題だった教育の属人化が解消されました。

「マニュアルがあることで“迷わず動ける”と話すスタッフも多いです。誤った理解が連鎖することも防げています」——西上氏

ベトナムの店舗で働く現地のスタッフたち

導入後の効果:教育の均質化と、更新スピードの飛躍的向上

ヤラク翻訳の導入効果は明確でした。

  1. 多言語マニュアルの更新スピードが大幅に向上
    • 「日本語版の更新とほぼ同じタイミングで各言語版も更新できるようになりました。現場の混乱がなくなったことが大きな成果です」(西上氏)
  2. 教育のばらつきが減り、標準化が進んだ
    • 常に最新のマニュアルを母語で読めるため、指導者による説明の偏りが大きく減少。
  3. 現場スタッフの理解度・安心感が向上
    • 外国籍スタッフは勉強熱心で、母語のマニュアルを渡すと主体的に読み込み、作業への理解が深まるケースが増えた
    • 「マニュアルがあることで“迷わず動ける”と話すスタッフも多いです。誤った理解が連鎖することも防げています」(西上氏)
  4. 言語リソース不足の解消
    • ネパール語やミャンマー語のように社内レビューが難しい言語でも、まずは高速に翻訳版を作り、必要に応じて調整できる体制が整いました。

取材を終えて:多言語対応は“当たり前”の業務インフラへ

1&Dは、ベトナム語・英語に加え、ネパール語・ミャンマー語への対応をさらに強化する方針を掲げています。

「店舗によっては外国籍スタッフが新人教育を担当するケースもあります。そうした店舗でも質の高い教育が行えるよう、多言語マニュアルの整備は今後ますます重要になります」——西上氏

もはや外国籍スタッフなしでは経営が成り立たない飲食業界。1&Dの取り組みは、先駆的でありながらも飲食業界のスタンダードになっていくものだと感じました。
接客マニュアルなどを多言語対応をしておくことは、制服を支給するのと同じように「当たり前の業務インフラ」になるはずで、スピード・コスト・使いやすさが備わったヤラク翻訳は、その環境の実現に貢献できるはずです。