「一文ずつコピペ」からの解放|留学生受け入れをきっかけに大学事務局が乗り出した翻訳業務改革|ファイルごと翻訳で時間短縮効果が絶大
「事務局に中国語がわかる職員がいない」。
中国からの留学生の受け入れをきっかけに、鈴鹿医療科学大学は“言葉の壁”という現実的な課題に直面しました。
中国語を話せる教員に頼らざるを得ない状況が続く中、翻訳作業は時間も手間もかかる状態に。この課題を解決するため、「ヤラク翻訳」の導入を決定。
ファイルごとに翻訳できる仕組みを取り入れたことで、翻訳作業の効率化と教員の負担軽減を同時に実現しました。導入の背景や活用の様子について、鈴鹿医療科学大学事務局の廣江知紀さんにお話を伺いました。

お話しを伺った方
鈴鹿医療科学大学
大学事務局 就職・キャリア支援課
係長 廣江 知紀さん
課題
中国人留学生の受け入れが決まったが、事務局に中国語対応できる職員がいなかった
中国出身の教員に翻訳を依頼していたが、本務があるため迅速な対応が難しかった
無料の翻訳ツールを使い、一文ずつコピー&ペーストして翻訳する非効率な作業が続いていた
解決策
ファイル単位で一括翻訳できる「ヤラク翻訳」を導入
国際交流センター内で翻訳のたたき台を作成できる体制を構築
MOU(大学間協定)や打ち合わせ資料など、中国語の文書を迅速に日本語へ翻訳
日本語で作成した案内文やメール文も中国語に翻訳し、海外大学との円滑なやり取りを実現
効果
ファイル翻訳により、翻訳作業時間が大幅に短縮。これまで手作業で行っていた作業から解放された
翻訳の下訳を事務側で用意できるようになり、教員には最終チェックやニュアンス調整のみを依頼する形に
セキュリティ面が担保された環境で、MOUなど機密性の高い文書も安心して翻訳できるようになった

「事務局では誰も中国語が分からない」留学生受け入れを機に直面した“言葉の壁”
ーー まず、ヤラク翻訳導入の背景や、当時抱えていた課題について教えてください。
廣江さん(以下、廣江)
きっかけは、中国にある医学系専門学校から「卒業生を編入させてほしい」というお話をいただいたことでした。これまで大学院生を受け入れたことはありましたが、学部生としては初めてのケースで、本格的な受け入れ準備が必要になりました。
しかし、事務局には中国語ができる職員がいなかったんです。海外から送られてくる書類を誰も読めず、対応に苦労しました。
ーー 具体的にはどのように対応されていたのでしょうか?
廣江
学内に中国出身の教員が何名かいるので、その先生方の力をお借りするしかありませんでした。ただ、先生方も本来の研究や授業でお忙しいので、翻訳業務でこれ以上ご負担をかけるのは申し訳ないという思いがありました。
事務局として、自立して翻訳業務を進められる体制を整える必要性を強く感じ、「何か良い翻訳ツールはないか」と探し始めたのが始まりです。
ーー 翻訳ツールはどのように探されたのですか?
廣江
最初はパッケージ型の翻訳ソフトや、他の有料サービスを調べていました。無料の翻訳ツールも試しましたが、一文ずつコピー&ペーストする作業は本当に時間がかかって。
そんな時、他の職員から「他大学で使われている翻訳ソフトが良いらしい」という話を聞き、ヤラク翻訳を知りました。大学での導入実績があるという点は、安心材料の一つでしたね。

「PDFをそのまま放り込めるのが楽」ファイル翻訳とセキュリティが導入の決め手に
ーー 最終的にヤラク翻訳の導入を決められた理由は何だったのでしょうか?
廣江
一番の決め手は、ファイルごと一気に翻訳できる手軽さです。特に「PDFをそのまま放り込める」というのは、私たちにとって非常に魅力的でした。
ヤラク翻訳導入前に学校案内パンフレットを多言語化した際は、日本語の文章を一つひとつ翻訳してレイアウトに当てはめていくという、気の遠くなるような作業を行っていました。もしあの時にヤラク翻訳があれば、と心から思います。
また、セキュリティ面も重視しました。大学間で交わすMOU(協定書)など、機密性の高い文書を扱うため、情報が外部に二次利用されないという点は安心して使える大きなポイントでした。
ーー 現在はどのように活用されていますか?
廣江
私のほかに国際交流センターの事務職員と関係する教員で利用しています。
主に、海外の大学から届く打ち合わせのレジュメやMOUの草案を日本語に翻訳したり、こちらからのメールや提案資料を相手方の言語に翻訳したりしています。
ドキュメントをそのまま翻訳できるので、とにかく業務が楽になり、時間短縮の効果は絶大です。「今本当にありがたいと感じています」というのが率直な気持ちですね。
以前のように一文ずつ翻訳して翻訳結果を戻して…という作業を延々と繰り返してた時間がなくなり、創出できた時間で別の業務に取り組めています。
先生方に翻訳のお願いすることもなくなったので、先生方の負担を軽減できたことも大きな成果だと感じています。
固有名詞の登録で翻訳精度を上げていく
ーー 翻訳の品質についてはいかがでしょうか?
廣江
翻訳結果を海外出身の教員に確認してもらうと、「ネイティブが見ると、少しニュアンスが違う部分はある」というフィードバックをもらうこともあります。
ただ、ヤラク翻訳で翻訳した内容をWordファイルで出力し、それをベースに先生に細かな表現を修正していただくという流れができています。ゼロから翻訳をお願いするのに比べて、先生の負担は格段に少なくなっているはずです。
大学名などの固有名詞はフレーズ集に登録することで翻訳精度を上げており、うまく活用できていると思っています。
留学生受け入れ拡大へ。学内の国際化を推進するパートナーとして
ーー 今後の展望についてお聞かせください。
廣江
現在、海外の他の学校とも新たにMOUを結ぶ方向で話が進んでおり、今後も留学生が増えていく可能性があります。そうなれば、翻訳業務の重要性はさらに増していくと考えています。
将来的には、学生やその保護者の方々が利用する学内向けのウェブサイトを多言語化することも検討しています。
留学生の親御さんが自国からでもお子さんの学習状況などを確認できるようになれば、それが一番良い形だと思っていますが、コストとの兼ね合いもあり、現在は検討段階です。
ーー 留学生の受け入れは、大学として重要なテーマになっているのですね。
廣江
はい。少子化が進む中で、海外に目を向けることは避けて通れません。留学生に来ていただくことは、日本人学生にとっても海外を知る良いきっかけになります。
一方で、私たちは医療系の大学として、在学生を国家試験に合格させなければならないという大きな使命もあります。留学生のための日本語教育に力を入れすぎると、国家試験対策のリソースが減ってしまうというジレンマもあり、学内でも様々な意見があります。
国際化と国内の教育体制の強化。この両輪をどう回していくか、非常に難しい経営判断が求められていますが、そうした中で、ヤラク翻訳のようなツールは、限られた体制でも前に進むための支えになっていると感じています。

千代崎キャンパス:三重県鈴鹿市岸岡町1001番地1
白子キャンパス:三重県鈴鹿市南玉垣町3500番地3
開校年:1991年4月(学校法人として「鈴鹿医療科学技術大学」として開学)
設置学部:保健衛生学部、医用工学部、薬学部、看護学部
在籍学生数:約2,731名(2025年5月1日時点)
WEB:https://www.suzuka-u.ac.jp/