イギリス英語の翻訳を理解し、業務に活かすために
日本では一般的にアメリカ英語が使われていますが、国際的なビジネスの現場や学術分野では、イギリス英語の使用も少なくありません。特にヨーロッパ市場や旧イギリス連邦諸国との取引では、イギリス英語での正確な翻訳が求められるケースが多くなっています。
本記事では、イギリス英語とアメリカ英語の違い、翻訳時の注意点、そして社内業務で活用できる実践的な翻訳方法について詳しく解説します。
イギリス英語とアメリカ英語の主な違い
語彙の違い
イギリス英語とアメリカ英語では、同じ意味でも異なる単語が使われることがあります。たとえば、
- アメリカ英語:”truck” → イギリス英語:”lorry”
- アメリカ英語:”apartment” → イギリス英語:”flat”
- アメリカ英語:”vacation” → イギリス英語:”holiday”
このような語彙の違いを理解していないと、意味が通じなかったり、違和感を与えたりする原因になります。
スペルの違い
イギリス英語はフランス語由来の綴りが残っていることが多く、アメリカ英語とは異なるスペルが使われます。
- colour(英) vs color(米)
- organise(英) vs organize(米)
- travelled(英) vs traveled(米)
細かいようですが、読者が英語圏のどこにいるかによって、適切な綴りを選ぶことが信頼性に直結します。
表現・言い回しの違い
イギリス英語には、独特の皮肉やユーモアを含む表現が多く、直訳では意味が通じにくい場合があります。たとえば、「I might have a think about it」は、文字通り訳せば「考えるかもしれない」ですが、実際には「断り」のニュアンスが含まれていることもあります。
ビジネス英語における実用的な違い
ビジネスシーンでイギリス英語とアメリカ英語を使い分ける際には、より実践的な観点での違いを理解しておく必要があります。
よく使われるビジネス語彙の違い
日本語訳 | アメリカ英語 | イギリス英語 |
履歴書 | resume | CV |
休暇 | vacation | holiday |
小切手 | check | cheque |
携帯電話 | cell phone | mobile phone |
ビジネス文書や社内コミュニケーションにおいて、これらの違いを認識しておくことで、誤解や不信感を未然に防ぐことができます。
フォーマルさとトーンの違い
アメリカ英語では比較的直接的でフレンドリーな文体が使われる一方、イギリス英語では丁寧で遠回しな表現が好まれます。
例:
- 米英式(直接的):Please contact me as soon as possible.
- 英式(丁寧):Kindly get in touch with me at your earliest convenience.
こうした表現の違いを踏まえると、ビジネス文書ではイギリス英語のトーンを適切にコントロールする必要があります。
文書フォーマットや日付の違い
- 日付表記:アメリカ式 → April 21, 2025 / イギリス式 → 21 April 2025
- アドレスや敬称の書き方にも地域差があり、英文書類の正確性や信頼性に影響します。
イギリス英語翻訳のポイントと注意点
イギリス英語を正確に翻訳するには、単語の置き換えだけでなく、文化的背景や文脈の理解が不可欠です。
まず重要なのは「トーン」です。イギリス英語は一般的にアメリカ英語よりも丁寧で控えめな表現が好まれます。そのため、翻訳時にもそのトーンを意識する必要があります。
また、同じ意味でも「やや古風」な言い回しを用いる傾向があり、これを意図的に取り入れることで、より自然な翻訳になります。
ヤラク翻訳のプロンプトカスタマイズ機能の活用
ヤラク翻訳では、AI翻訳に生成AI(GPT-4o、Claudeなど)を活用し、さらに精度の高い自然な翻訳を実現しています。特に、2025年のアップデートで導入された「プロンプトカスタマイズ機能」は、イギリス英語翻訳にも非常に有効です。
この機能を使えば、翻訳トーンや文体を細かく指定できます。たとえば:
- 「イギリスの法律文書向けのフォーマルな文体で」
- 「イギリス人の若者が話すような口語調で」
- 「BBCのニュース記事風に」
といった指示を日本語でも入力でき、翻訳結果に反映されます。これにより、従来の機械翻訳では難しかったニュアンスの調整が可能になりました。
また、プロンプトは自由記述式であるため、特定の顧客や業務に応じたカスタマイズも簡単です。社内ドキュメント、メール、プレゼン資料など、用途に応じた最適な翻訳が可能になります。
フレーズ集×部分一致で表記ゆれを自動修正
ヤラク翻訳のもう一つの特長が「フレーズ集と部分一致機能」です。従来の翻訳エンジンでは、登録したフレーズが原文と完全一致しないと反映されないことが一般的でした。しかしヤラク翻訳では、部分一致でも自動的に翻訳結果に反映されるため、文脈に応じた表記の一貫性が保てます。
たとえば、アメリカ式の「May 8, 2024」という日付を、企業内で「2024/5/8」と統一したい場合:
- 一度「May 8, 2024 → 2024/5/8」とフレーズ登録するだけで、
- 以降の翻訳作業では、文章全体が異なっていても「年/月/日」の形式に自動変換されるようになります。
これは日付だけでなく、会社名の表記ゆれ(例:ABC Inc. ⇔ ABC株式会社)、敬称(Dear Sir ⇔ 担当者様)などにも応用できます。
イギリス英語特有のスタイル(例:「21 April 2025」)の維持や統一にも非常に効果的です。
この機能によって、翻訳の品質と業務効率の両立が可能になります。
翻訳後のポストエディット(後編集)の重要性
AI翻訳やイギリス英語に対応したツールを使えば、翻訳作業の効率は格段に上がりますが、「そのまま使える完璧な翻訳」が常に得られるとは限りません。とくに社外に出す文書や、重要なビジネスコミュニケーションにおいては、最終的な確認を人間の目で丁寧に行う必要があります。
以下の観点をもとに、チェック作業を行うことをおすすめします。
スペルが英式に統一されているか?
イギリス英語では「colour」「organisation」「centre」など、スペルがアメリカ英語と異なる単語が多数あります。ドキュメント内でスペルが混在していると、受け手に違和感を与え、プロフェッショナリズムを損なう可能性があります。
チェック例:
- “realize” → “realise”
- “analyze” → “analyse”
- “license”(名詞)→ “licence”
トーンや文体が文書の目的に合っているか?
イギリス英語は、丁寧で控えめなトーンが基本です。カジュアルすぎたり、逆に直接的すぎる表現はビジネスの場では不適切に映ることがあります。特に、社外の取引先や上司宛の文書では、相手との関係性や状況に応じて、表現のトーンを見直す必要があります。
例:
- カジュアルすぎる → “Let me know what you think!”
- 適切なビジネストーン → “I would appreciate your feedback at your earliest convenience.”
また、社内向けメールでも、相手が役員や管理職の場合には、よりフォーマルな表現を選ぶことが望ましいでしょう。
不自然な直訳・文化にそぐわない表現がないか?
AI翻訳は正確な文法構造を持っていても、文脈を正しく反映できない場合があります。そのため、直訳調の表現や、日本語独特のニュアンスが残ってしまうこともあります。
例:
“We would appreciate your kind cooperation.”
・ 丁寧に聞こえるが、イギリス人にはやや冗長または不自然に映ることがある。
・ “we would appreciate” は丁寧すぎて仰々しい印象を与えることがあり、日常的なビジネスシーンでは “Thank you for your cooperation.” の方が自然。
・ Tip:「〜していただけるとありがたいです」と言いたい場合、“Thank you for…” で始める方が、英国ではより一般的で伝わりやすい。
“Thank you for your continued patronage.”
・「patronage」は格式ばった語で、小売業や公共機関向けの定型表現としては使われるが、一般的なビジネス文脈ではやや不自然。
・ より自然な言い回し:“Thank you for your ongoing support.”
・ Tip:「ご愛顧」に対応する英語表現としては、“support” の方が圧倒的に使われやすく、to the point で温かみのある印象を与える。
また、文化的背景に合わないユーモアや比喩表現も避けるべきです。イギリスでは皮肉や暗示的な言い回しが好まれる一方、冗談が過ぎると失礼と受け取られる可能性もあるため、慎重に見極めましょう。
まとめ
イギリス英語の翻訳は、単なる語彙の変換にとどまらず、読み手の文化や期待されるコミュニケーションスタイルに沿った調整が求められます。特にビジネスの場面では、文書のトーンや丁寧さ、表現の微妙な違いが取引関係に影響を及ぼすため、細やかな配慮が不可欠です。
また、翻訳品質の統一や業務の効率化という観点からも、専門用語の反映やセキュアな運用が実現できる翻訳ツールの導入は重要です。翻訳後のチェック体制とあわせて、信頼性の高いコミュニケーション体制を構築することで、社内外における英語対応力を強化することができます。
今後、グローバル展開や海外企業とのやり取りが増える中で、イギリス英語への適切な対応は企業の信頼性や印象に直結します。正確で配慮の行き届いた翻訳を実現するために、最適な翻訳手段を見極め、継続的な運用を進めていきましょう。
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この記事の執筆者:Yaraku ライティングチーム
翻訳者や自動翻訳研究者、マーケターなどの多種多様な専門分野を持つライターで構成されています。各自の得意分野を「翻訳」のテーマの中に混ぜ合わせ、有益な情報発信に努めています。
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