近年翻訳のニーズが増え、翻訳の現場でも効率性が求められるようになってきました。翻訳作業の効率化を支えるのが翻訳支援ツール(CATツール)です。CATツールをうまく活用できれば翻訳作業の効率が大幅に上がります。
この記事では、CATツールとは何か、導入するメリット、機械翻訳(MT)との違い、代表的なツールや選び方についてご紹介します。
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この記事の監修者
山田 優(Masaru Yamada)
立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科博士(異文化コミュニケーション学/翻訳通訳学)。フォードモーター社内通訳者、産業翻訳者として活動。その後日本通訳翻訳学会理事と一般社団法人アジア太平洋機械翻訳協会(AAMT)理事を歴任。 詳しく見る
結論
CATツールは、翻訳メモリや用語集などを活用し、訳文の一貫性や確認作業、共同作業を支援するツールです。機械翻訳は文章を自動で翻訳する技術で、CATツールと連携して利用できる場合もあります。導入時は、翻訳量、共同作業、対応ファイル、セキュリティ、料金などを比較して選びましょう。
この記事の概要
- CATツールと機械翻訳の違い、CATツールを使うメリット(翻訳メモリの活用・訳抜けの確認支援・共同作業・プロセスの可視化)
- 代表的な翻訳支援ツール5選(ヤラク翻訳・OmegaT・Smartcat・Phrase TMS・Trados Studio)の特徴比較
- 複数の翻訳エンジン、用語管理、セキュリティ機能などを備えたヤラク翻訳の特徴
翻訳支援ツール(CATツール)とは

CATは、Computer-Assisted Translation(コンピュータ支援翻訳)の略称です。
直訳すると「コンピュータに支援された翻訳」。つまりコンピュータシステムを使って、翻訳者およびリンギストが行う翻訳プロセス(編集、データの管理や保存など)を支援することを指し示します。
CATツールを用いることで訳抜け・訳漏れを回避することや翻訳の一貫性を保つことができ、翻訳の質を高めることができます。また蓄積された翻訳データを再利用できるので、分量が多い翻訳を行う際の翻訳スピードの向上にも繋がります。複数人が翻訳作業を分担する際にも役立ちます。
取扱説明書、マニュアル、仕様書、リリース、レポート、申請書、契約書など、同じ用語や表現が繰り返し使われる文書や、短期間に多くの文章を翻訳する場面では、CATツールを活用しやすくなります。
【参考】日本製CATツール「ヤラク翻訳」の機能詳細
CATツールのメリットはなに?
では、CATツールを使うことで翻訳業務をどのように支援できるのか、主なメリットを見ていきましょう。
1) 翻訳メモリを活用し精度・スピードを向上
CATツールには、TM(翻訳メモリ)と呼ばれる機能があります。TMはTranslation Memoryの略で、過去に翻訳した原文と訳文のペアをデータベースに保存・蓄積します。
翻訳メモリを参照することで、過去の訳文を候補として再利用し、用語や表現の統一に役立てることができます。
特に翻訳量が多い場合、ゼロから翻訳を行うときに比べ、作業時間を大幅に短縮することが可能。翻訳の精度も高まります。
2) 訳漏れ・訳抜けを減らす

長い文書を人手で翻訳する場合、原文の一部を見落とす可能性があります。CATツールでは原文をセグメント単位で分割し、原文と訳文を並べて表示するものが多いため、未翻訳箇所を確認しやすくなります。
CATツールによっては、訳抜け、原文と訳文の不一致、タグや数値の不一致、同じ文字の重複などを確認するQA(品質管理)機能を備えています。
3) 共同作業をより良いものに
複数人でひとつの文書の翻訳に取り組む場合、CATツール内で翻訳メモリを共有することができ、用語や言い回しの統一を図ることができます。
参考:The Usefulness of CAT Tools
共有した翻訳メモリや用語集を参照することで、担当者が異なる場合でも訳文の一貫性を保ちやすくなります。また、ツールによっては、作業に関する質問やコメントをツール内で共有できる機能もあります。
ツールによっては、文書にアクセスできる翻訳者や校正者を管理する権限設定機能もあります。翻訳データへのアクセスを管理する際に役立ちます。
4) 翻訳プロセスの可視化
ツールによっては、作業状況をリアルタイムで共有し、翻訳の進捗を画面上で確認できます。
また、CATツールを使用すると、過去の原文と新しい原文を比較し、新らしく翻訳する必要がある箇所と量の把握が可能になります。想定作業量(作業日数や人数)の算出にも役立ちます。翻訳作業プロセス全体を見渡すことができるようになるのです。
翻訳支援ツール(CATツール)と機械翻訳は異なるもの
混同されがちなCATツールと機械翻訳(MT 自動翻訳ツール)。この2つは同じものではありません。
機械翻訳とは、コンピュータを利用して自動で行われる翻訳を指します。「機械翻訳エンジン」という言葉もよく耳にしますが、これは自動で翻訳を行っているその装置(≒システム)ということですね。
それに対し、CATツールは翻訳プロセスの支援を行うソフトウェアやアプリを指します。翻訳作業をサポートしてくれるツールなので、「CATツール」の機能の一つに機械翻訳も含まれている場合があります。

生成AI翻訳とCATツールを連携させることで作業効率アップ
近年機械翻訳の精度が大幅に向上したとはいえ、翻訳のミスやニュアンスの違いは依然として生じます。企業独自の言い回しや表現などが加味されないといったことも当然起こります。
また、マニュアルや見積書など正確さが重要視される場面や、訳文をを公の場に掲載する場合、細部まで正確な翻訳が必要とされる場合には、やはり人手によるチェックが必要となります。
そんな時に機械翻訳とCATツールを連携させることで、翻訳作業の効率をさらにアップさせることが可能です。
例えば、機械翻訳や生成AIで下訳を作成し、過去の原文と訳文のペアを保存した翻訳メモリや用語集を参照しながら、訳文を確認・編集できます。
CATツールでは過去に保存した対訳データと現在翻訳を行っている原文の一致率を算出することができ、一致率が高い場合にはその対訳データをそのまま訳文セグメントに反映させることができます。一致率が低い場合には機械翻訳の訳出結果を利用したり、人手でゼロから訳文を作るといったパターンもあります。
CATツールは、機械翻訳や生成AIの結果と、人による確認・編集を一つの作業フローで進める際に役立ちます。
おすすめ翻訳支援ツール(CATツール)【無料・有料】
多くの翻訳支援ツールが販売・提供されています。無料のものから有料のものまであり、それぞれ機能や特長が異なるので、用途や作業内容に合わせて比較・検討することが必要です。
今回は「ヤラク翻訳」「OmegaT」、「Smartcat」、「Phrase TMS(旧Memsource)」、「Trados Studio」についてご紹介します。
ヤラク翻訳
「ヤラク翻訳」は、AIを活用した翻訳ワークスペースです。
ヤラク翻訳では、ヤラク、GPT-5.4、GPT-5.4 mini、Gemini、GPT-5.4、GPT-5.4 mini、Papago、Microsoft Translatorなど、複数の翻訳エンジンを利用できます。また、「チェックアシスタント」が翻訳結果の確認を支援し、確認が必要な箇所を把握しやすくします。
また、機械翻訳の結果にユーザーが登録する「フレーズ集」と「用語集」が適用された「パーソナライズ翻訳」が出力されます。
翻訳の結果は、どのように訳されているか一目で把握でき、その自動翻訳結果を人が編集するという作業までシームレスに行うことができるため、作業効率が大幅に上がります。さらに編集・保存した訳文はフレーズ集に適宜登録されるため、次回からの自動翻訳に再活用することが可能となります。
OmegaT

2000年にKeith Godfreyにより開発されたオープンソースの翻訳支援ツール。オープンソースソフトウェアのため自由にダウンロードができ、無料で利用することが可能です。
翻訳している文章と、これまでの翻訳内容を自動的にチェックし、類似したものがあれば参考訳文ウィンドウに表示されます。事前に用語集と辞書ファイルを追加しておくと、その内容を参照することも可能です。
無料で利用でき、翻訳メモリや用語集などCATツールの基本的な機能を備えているため、用途や運用環境が合えば選択肢の一つになります。
Smartcat

Smartcatは、クラウド上で翻訳・ローカライゼーションのプロジェクト管理や共同作業を行えるプラットフォームです。翻訳メモリや用語集、AI翻訳、ワークフロー管理などの機能を提供しています。
クラウド上でプロジェクトを管理し、翻訳者、レビュー担当者、プロジェクト管理者などが共同作業できます。また、Marketplaceを通じて翻訳・ローカライゼーションの専門家を探す機能も提供されています。
クラウド上でプロジェクトや担当者を管理し、オンラインで翻訳作業を進められる点も特徴です。
Phrase TMS(旧Memsource)

Phrase TMSは、クラウドベースの翻訳管理システムです。CATエディタで翻訳メモリ、用語ベース、機械翻訳などのリソースを利用しながら、翻訳ジョブを管理できます。Web版とデスクトップ版のCATエディタが提供されています。
プロジェクトには、翻訳メモリ、用語ベース、機械翻訳、QAなどの機能を組み合わせて利用できます。
チームスタート、チーム、アルティメット、エンタープライズの4つの料金プラン。チームスタートは一ヶ月あたり$29(年間一括払いの場合)、チームは一ヶ月あたり$209(年間一括払いの場合)、アルティメットは一ヶ月あたり$369(年間一括払いの場合)、エンタープライズは要問合せとなっています(2023年8月時点)。
Phrase TMSのCATデスクトップエディタはオフラインでの翻訳にも対応しています。なお、2025年10月からデスクトップエディタはメンテナンスモードとなっており、最新機能を利用する場合はWebエディタが推奨されています。
Trados Studio

Trados Studioは、RWSが提供する翻訳支援ツールです。翻訳メモリや用語ベース、QA、機械翻訳連携など、翻訳・レビュー作業を支援する機能を備えています。
翻訳メモリのほか、辞書機能(MultiTerm)を搭載しており、翻訳前に辞書機能であるMultiTermで用語を確定しておくと、プロジェクト全体での用語統一が可能。doc、html、FrameMaker、xml、sgml、xls、Indesignなど最新のTrados Studio 2022は、50種類以上のさまざまなファイル形式に対応しています。
翻訳チーム向け製品であるTrados Studio Professional 350,000円(1年)、Trados Studio Professional Networkは要問合せとなっています。30日間の無料トライアルが可能です(2023年8月時点)。
翻訳メモリや用語ベース、プロジェクト管理機能を組み合わせて利用できるため、継続的な翻訳や複数ファイルを扱うプロジェクトでも活用できます。
ヤラク翻訳では複数の翻訳エンジンが使える

AI翻訳ワークスペース「ヤラク翻訳」では、複数の翻訳エンジンを利用できます。
- ヤラク
- Google翻訳
- Gemini
- Claude
- Google翻訳
- Microsoft Translator
- Claude
- Papago
- みんなの自動翻訳@KI(商用版)(※オプション)
1つの画面で複数の翻訳エンジンを利用できるため、用途に応じて翻訳結果を比較し、使用する訳文を選択できます。
PDF、Word、Excel、PowerPointなどのファイルを翻訳・編集し、翻訳後のファイルをダウンロードできます。
機能は定期的にアップデートされ、新しい機能や改善が追加されています。
圧倒的に使いやすいシンプル画面

AI翻訳ワークスペースのヤラク翻訳は初めて使う方でも直感的に操作できるほど、シンプルで使いやすい画面です。自動翻訳はもちろん、編集サポートから共同編集も簡単にできます。
さらに、カンパニープランではセキュリティも保証しており、機密性の高い文書でも安心して翻訳していただけます。
対応言語は36言語、翻訳可能なファイル形式は9種類です。月間の翻訳文字数や翻訳回数に制限はありません(カンパニープランでは1回あたり翻訳上限は最大150,000文字まで)。
まとめ:翻訳支援ツールの導入で翻訳作業を効率化
CATツールは、翻訳業務の効率化や訳文の一貫性維持を支援する選択肢の一つです。
CATツールを機械翻訳や生成AIと組み合わせることで、下訳の作成、過去訳の再利用、用語の統一、確認・編集を一つの作業フローで進められる場合があります。
導入する際は、翻訳量、共同作業の有無、対応ファイル、セキュリティ、料金などを比較し、自社の翻訳業務に合うツールを選びましょう。
CATツールと機械翻訳の違いは何ですか?
CATツールは、翻訳メモリや用語集、QAなどを使って人の翻訳作業を支援するツールです。一方、機械翻訳は文章を自動で別の言語に翻訳する技術です。CATツールによっては機械翻訳と連携し、訳文候補として利用できます。
CATツールは無料で使えますか?
はい。OmegaTのように無料で利用できるCATツールもあります。有料プランでは、共同作業、管理、セキュリティなどの追加機能が提供される場合があります。料金だけでなく、必要な機能や運用条件を比較して選びましょう。
CATツールを選ぶ際のポイントは何ですか?
翻訳量、共同作業の必要性、対応ファイル、既存システムとの連携、セキュリティ要件、料金などを比較することが重要です。機密性の高い文書を扱う場合は、自社のセキュリティ要件を満たすか、データの取り扱いやアクセス管理を確認しましょう。
▼参考文献
[1] memoQ (n.d.). Why use CAT tools? 2025年9月11日取得, https://files.memoq.com/hubfs/eBooks/memoq_why_cat_tools_ebook.pdf
[2] Transifex (2024). CAT Tools: All You Need to Know. 2025年9月11日取得, https://www.transifex.com/blog/2024/computer-assisted-translation-cat-tool
[3] American Translators Association (ATA) (n.d.). The Usefulness of CAT Tools. 2025年9月11日取得, https://www.atanet.org/tools-and-technology/usefulness-cat-tools
テキストやファイルを高品質に翻訳。
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この記事の監修者
山田 優(Masaru Yamada)
立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科博士(異文化コミュニケーション学/翻訳通訳学)。フォードモーター社内通訳者、産業翻訳者として活動。その後日本通訳翻訳学会理事と一般社団法人アジア太平洋機械翻訳協会(AAMT)理事を歴任。 詳しく見る
この記事の執筆者:Yaraku ライティングチーム
八楽株式会社のマーケティングチーム所属。「自動翻訳で適切な翻訳結果を得るには、使い方や確認のプロセスが重要」と考え、翻訳に役立つ情報を発信している。
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